知りあいのエンジニアさんから連絡があって、
ある専門学校の生徒達がこぞってスタジオにやってきた。
普段はデジタルな作業が中心の授業らしいが、アナログな現場を見るとかいうなにやら課外授業みたいな感じだった。
丁度、BO DIDDLEYトリビュートCD(制作に1年かかってしまった!!!)の最終工程に入っていたのもあり、作業を少し手伝ってもらったりもした。
ちなみにトリビュートCDは豪華な顔ぶれで秋にはリリースされる運びです。
オムニバスCDというのは色んなバンドが入るのでとても大変だ。
特に今回はGRAND-FROG STUDIOで出来るだけ録音するというのが一番の目的だったので更に大変だった。
通常、オムニバスCDっていうものは大体各バンドから音源が提出されて出来上がるものだが、最終的になんだか物足りない寄せ集めCDになってしまうのが個人的には嫌だった。
それこそ偉大なるBO先生のトリビュートなのだから何か一つでもこだわらないといけないのである。
しかし、皆さんツアーやら、俺たちもツアーやらで、本当にシビアなスケジュール進行だった。よく出来たもんやな。
まあ、その話はまた後日。
で、一緒にスタジオにやって来た先生は、さあ、みんなここで全てを教えてもらいなさい!!という勢いだった。
いろんな専門用語での質問がオレに浴びせられた。
と、言われても、オレは全く分かる訳がな〜い。
「このツマミは?」とか言われても、「このツマミを回すと、ビートルズっぽくなる」とか「このスイッチはとにかくやばい。リーサルウエポンみたいなもん。オレはこのスイッチをメル・ギブソンと名付けている」としか答えられない。
何せオレはそんな学校など行った事もないし、自分勝手なエンジニアリングだから。
音のサンプルを加工するという作業を一つ見せてくれ、ということでとりあえず作業を始めた。
リールテープの音とデジタルの音の聞き比べをしたりする。
音の波形を表示する画面をみんなは見ながら、オレは作業をすすめた。
ある生徒が画面の数値やら何やらを見て「これで大丈夫なんですか?」と言う。
どうやら、普通に考えるとこの作業はありえない事をしている様だった。
もちろん今までオレはそんな事など気にした事がない。
デジタルは保険として置いてあるもので、最初から頼っていない。
音楽を聴く時に音の波形を見ながら聴くなんてまったくつまらんやないかいな。
なので、布を画面にかけて、「モニター等どこにもない。見えなければ問題ないやろう。さあこれで大丈夫。」とした。
そして「音楽を作る時は自分の耳を信じて、指先に一瞬のパワーを送り、この大きなツマミを迷う事無く一気に回す事だ」 と、適当に偉そうなことを言った。
あと、重要な事はバンドメンバー全員の意見は聞かないことかなあ、ただもめるだけだから、と言っておいた。
みんな笑っていた。
とにかく、アナログ機材のでっかいツマミがみんな気に入ったようだ。
急に頭の中がざわ、ざわ、ざわ...とした。
パチンコ、黙示録カイジがなぜか頭に浮かび、
「未来を掴むんだ」みたいな言葉が出てくる。
そう、俺たちは「未来をつまむんだ」。